きみに初恋メランコリー
足を動かすにつれ、だんだんと中庭の入口にあるアーチが鮮明に見えてきた。



「(……いた)」



中庭の、校舎の影ができてる隅の方。

そこに刹くんは、こちらに背を向けるかたちで立っていた。

胸の前で、組んだ両手をぎゅっと握りしめる。

逃げ出したくなりそうな両足を心の中で叱咤しながら、その背中に近づいた。



「……刹くん」



わたしの呼びかけに、パッと後ろを振り返る。

そしてわたしの姿を認めたとたん、少しだけ、そのこわばった表情を緩めた。



「花音。……来てくれ、たんだな」



小さすぎるそのつぶやきは、後半の方が、よく聞き取れなくて。

だけどわたしはそれを聞き返すこともなく、彼とは少し距離をあけたまま、立ち止まった。

刹くんの顔は、まっすぐに見れない。

けれどもわたしは意を決して、震えるくちびるを開いた。



「刹くん、あの、話って……」

「花音、昨日のこと、神崎に話さなかったんだな」

「え」



予想外のそのセリフに、思わず目を丸くする。
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