きみに初恋メランコリー
──昨日のこと。

それが帰り際の、あのキスのことを指しているんだとわかったわたしは、ぐっとくちびるを噛みしめた。

泣いてしまわないように、目元に力を入れながら、なんとか口を開く。



「話して、ないよ」

「だよな。もし話してたとしたら、俺朝イチでぶっ飛ばされてるか」



そう言って刹くんは、自嘲的に口の端を上げた。

どうして彼が、そんな表情をしているのかわからない。

わたしは少し不思議に思いながら、彼の次の言葉を待った。



「……花音」



名前を呼ばれるのと同時、予想外に真剣な視線とぶつかって、思わずたじろぐ。



「俺、謝らないよ。昨日したこと」

「……え」

「だってあれは、俺の気持ちだ。……いきなりしたのは、悪いと思ってるけど。だけどキスしたことは、謝らない」



……わけが、わからない。

ぐるぐる、ぐるぐる、頭の中を刹くんの言葉がまわって。

彼は今、何を言っているの?



「──俺、花音のことがすきだ」
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