きみに初恋メランコリー
「いーよいーよ。ていうかあんなの、ただ俺がお節介しただけだしね」



男女間のもめ事に、本当なら他人が口を出すべきではないのだ。

しかも俺のような、“ただの先輩”なんて。

けれども彼女は納得できないのか、眉を思いっきり下げて俺のことを見上げている。



「で、でも……」

「うーん。じゃあ花音ちゃんはさ、俺があのとき割り込んできて、多少なりとも助かった?」

「え? は、はい」



戸惑いながらもうなずいた彼女に、俺はにっこりと笑ってみせる。



「それなら、『すみません』じゃなくて……『ありがとう』って言ってもらった方が、俺個人としてはうれしいかなあ」



言いながら、笑みを崩さずに、花音ちゃんの顔を覗き込んだ。

彼女は一瞬、ぽかんとした表情をしていたけれど。

すぐにハッとして、まっすぐ視線を合わせてくる。



「あ、あの。……ありがとう、ございました」

「うん」



そう言ってうなずく俺に、花音ちゃんは照れたような小さな笑みを浮かべた。

その頬は、少しだけ赤く色付いている。

素直にそんな彼女がかわいいと思った俺は、無意識に頭を撫でようと右手を出しかけ、慌てて止めた。


……危ない危ない。

いくら花音ちゃんの男性恐怖症が、以前よりもマシになったからといって……こんなの、ダメだ。
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