きみに初恋メランコリー
俺は、何かを取り繕うように。

気づいたら、口を開いていた。



「それにしても、あの転入生、ちょっと乱暴だなあ。花音ちゃんこんなに細いのに、腕無理やり掴んで」



言ってから、しまったと思う。

『男女間のもめ事に、他人が口を出すべきではない。』

そう思った、ばかりなのに。


花音ちゃんは一瞬だけ、驚いたような顔をする。

それでも小さく苦笑して、口を開いた。



「刹くんが、悪いわけじゃないんですよ。……わたしにも、問題があって……」



言いにくそうに、花音ちゃんが俺から視線を逸らす。



「実は先輩との約束がなくなったあの日に、偶然彼と会って。……それで、ちょっと、いろいろ」



窓の外へと目を向けて、花音ちゃんはどこかさみしそうにも見える表情でそう話した。

そして不意に、くるりとこちらを振り返る。



「大丈夫ですよ。あれから、彼に何かされたりとか、ないですから」

「……そっか」

「心配、してくれて……『ありがとうございました』」



言いながら、はにかむ彼女の顔を見た瞬間。

きゅうっと胸を締めつけられるような、不思議な感覚が訪れて、俺は息を詰めた。


なぜか切なくて、無性に、愛おしい。

……こんなの。

こんなの、って……──。
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