きみに初恋メランコリー
・溢れた想い
「……花音、顔色悪い」
朝教室に入ってきたわたしを見るなり、しおちゃんが眉を寄せながらそう言ってきた。
気にしないでという意味を込めて、片手を振る。
「ちょっと寝不足なだけ。心配ないよ」
「……ほんとに?」
小さく笑みを浮かべて答えると、しおちゃんはじっと顔を覗き込んできた。
さらに苦笑して、わたしは自分の机にかばんを置く。
「ほんとほんと。あっ、そういえばしおちゃん、世界史の宿題やった? わたし1つ、わからない問題があって……」
「……どれ?」
釈然としない表情ながらも、そう言ってノートに視線を落とす。
やさしいしおちゃんは、いつだって、わたしのことを心配してくれている。……深く聞かれたくないことは、その通りにしてくれる。
いつもごめんね。ありがとう、しおちゃん。
心の中で、こっそりつぶやいた。