きみに初恋メランコリー
「花音ちゃんごめんね、嫌だろうけど、あとちょっとだから……」



先輩はなるべく振動を与えないように、だけどできる限り急いでいるとわかる様子で、わたしのことを運んでくれる。

男の人が苦手、というわたしを気遣ってくれているのか、彼は何度も、ごめんねと眉を寄せてささやいた。



「……ッ、」



どうして、だってこんな、お姫さま抱っこなんて、先輩だって恥ずかしいはずなのに。

見上げた先輩の首筋に、汗がつたう。

真剣で、切羽詰まったような表情が、すぐ間近にある。


……ああ、だめだ。

あきらめなきゃって、思っても。

すきになってはいけないって、言い聞かせても。

どうしたって、わたしは、この人がすきだ。

わたしは、この人のそばに、いたいんだ。


にじんできた涙と、ぎゅっと彼の胸元にすがりついた手を、貧血のせいにして。

わたしは、意識を手放した。
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