きみに初恋メランコリー
「──、」



ふっと、目が覚める。

まず視界に映ったのは、どこかで見たことがある天井。

そしてそれが学校の保健室だということにも、すぐに気がついた。


……そうだわたし、貧血を起こして、それで……。


枕に頭を預けたまま、ゆるゆると、顔を左側に向ける。

そして目に飛び込んだ光景に、息を飲んだ。



「……せん、ぱ……」



そこには、パイプ椅子に腰掛けてうとうと居眠りをしている、奏佑先輩の姿があった。

ここは1番窓際のベッドらしく、少しだけ開けられた窓から風が入って、カーテンと先輩の髪をやわらかく揺らしている。

わたしの小さなつぶやきに反応したのか、奏佑先輩の瞳が、ぱちりと開いた。



「……あ、花音ちゃん……目ぇ覚めた?」

「は、はい……」

「ってうわ、俺も寝てたんじゃん。恥ずかしー」



そう言って先輩は頭をかきながら、照れたように笑った。

ドキドキしているわたしの目の前で、うーんと両手を上げて伸びをする。



「ん、顔色だいぶ良くなったね。先生が言うには、ただの貧血だって。よかったね」

「え、あ、はい」

「ちなみにその先生は、今呼び出されて職員室に行ってる」



やわらかい声音で話しながら、やさしく笑みを浮かべる先輩を、ぼんやりとベッドから見上げる。

と、すぐに異変に気がついて、わたしはハッと上半身を起こしかけた。
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