きみに初恋メランコリー
「……先輩」

「ん?」



やさしく口元を緩めている奏佑先輩の顔を、ただまっすぐに見上げる。



「……ありがとう、ございます」



ひとことだけ、でも心を込めてそう言えば、先輩はとてもうれしそうに、笑ってうなずいた。

そして先輩は椅子から立ち上がると、窓に手をかける。



「風気持ちいいね。もう少し窓開けようか」

「……はい」

「いやでも、驚いたなあ。階段下りてたら、いきなり花音ちゃんがうずくまってるの見つけたから」



窓の外を見ながら話す奏佑先輩の背中を見ながら、わたしはゆっくりと起き上がる。

そしてそっと、ベッドから下りて床に足をつけた。

するとやはり、立とうとしたそばからぐらりと体が傾く。



「うわっ、花音ちゃん……!」



崩れそうになったわたしの体を、気づいた先輩がすんでのところで支えてくれた。

わたしも先輩も床にひざをついて、近い距離で向かい合っている。
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