きみに初恋メランコリー
「そうね……アドレスを交換したりするのって、大抵別れ際だろうしねえ」

「んー……」



ため息混じりのしおちゃんのセリフに、苦笑を返す。

ちなみにしおちゃんは社会人の彼氏さんがいるから、今回の合コンには不参加だったんだ。写真でしか見たことがないけど、スーツの似合うクールな感じの人。

わたしも、しおちゃんみたいにいつかは大好きな恋人ができたらって、実はこっそり夢見てた。


テンションの低いわたしに、しおちゃんは考えるそぶりをしながら少しだけ首をかしげる。

それからまた、口を開いた。



「まあ、初めてだったしいい経験にはなったでしょ。というか、花音が少しでも気になった人はいなかったの?」

「っえ、」



“気になった人”。

その言葉で頭の中に思い浮かんだのは、あのソウスケ先輩のことで。

わたしは曖昧に視線をさまよわせながら、ぼそぼそとつぶやいた。



「いなかった、わけではない、よ」

「えっ? なにそれ、どんな感じの人?」

「どんな、って……」



予想通り、興味津々といった様子で食いついてきたしおちゃん。わたしはあの日のことを思い出す。
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