きみに初恋メランコリー
♩︎*゚Track:6
・思い出す姿
「そーちゃん、入るよー」
そんな言葉とほぼ同時、自室のドアがノックもなしに遠慮なく開かれた。
俺は耳につけていたヘッドフォンを外し、勉強机に向けていた上半身を背後の人物にひねる。
顔には、思いっきり不機嫌を表すことは忘れずに。
「まどか……もうハタチになったんだから、いい加減ノックくらい覚えろよ」
「うるっさいわねー。てかアンタ勉強してんの? えらいじゃん」
「明日、古典の小テストがあんだよ」
で、なに?という意味を視線に込めながら、俺はノートの横にシャーペンを置いた。
まどかは目の前で仁王立ちしながら、手にしているものを軽く振ってみせる。
「こないだ、借りたDVD。観終わったから返しに来た」
「ああ……そのへんに置いといていーよ」
そう言って、俺はベッドの前にあるローテーブルを指さす。
まどかは素直にDVDをテーブルの上に置くと、なぜかじっと、こちらを凝視してきた。
眉を寄せて、俺はその視線を受け止める。
「……なに?」
「や、なーんでも~」
言いながら、まどかはためらいもなく俺のベッドに腰を下ろした。
彼女の体重を受けて、ぼすんと軽い音をたてつつスプリングが軋む。
まるで、子どもがやるしぐさだ。それを見た俺は椅子のキャスターを動かし、ようやく体全体をまどかへと向けた。