きみに初恋メランコリー
──パチパチパチパチ!!

すぐそばで聞こえた勢いのある拍手に、わたしはビクッと肩を震わせた。

顔を向けると、奏佑先輩がいまだ手を叩きながら、笑顔でわたしのことを見つめている。



「花音ちゃん、すごかったよ! 音楽の才能なんてまったくない俺にも、すごいってわかる演奏だった!」

「え……あ、ありがとう、ございます」



ストレートな先輩の褒め言葉に、思わず顔が赤くなる。

照れくさくて、うれしくて、恥ずかしい。うつむいていると、ぽん、とやさしく、頭にあたたかい手が乗せられた。



「ほんと……すごいよ、花音ちゃんは」

「……ッ、」



ゆっくりと頭を撫でてくれる手のひらに、胸が熱くなる、けど。

わたしには先輩のその言葉が、ただピアノのことだけを示しているわけではないような気がして。

きゅっとひざの上の両手を握りしめ、わたしはそっと、上目遣いに彼を見つめた。
< 159 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop