きみに初恋メランコリー
「……あの、奏佑先輩」

「ん?」



首をかしげる先輩を、できるだけまっすぐ見上げて。

わたしは、震えるくちびるを開く。



「先輩の、すきな人って……どんな人、なんですか?」



息を詰めた奏佑先輩の手が、すっとわたしから離れた。

動揺が見えるその瞳は、一瞬だけ、伏せられた後。

つい、と、窓の外に向けられた。



「……そんなの、聞きたいんだ」

「はい。……聞きたい、です」



言いながら、わたしはうなずく。

ただ、自分の傷口に塩を塗るような質問だ。

それでもわたしは、先輩のすきな人のことを、聞いてみたかった。



『……俺は、昔からずっと、叶わない想いを持ってる。……叶わないと知ってても、それを捨てられずにいる』



先輩が、ここまで言ってくれる人。一途に、想う人。

その人のことを他でもない先輩の口から、聞いてみたいと思ったんだ。


遠くに校内の喧騒が聞こえる、少しの静寂の後。

奏佑先輩は窓の方を向いたまま、ゆっくりと、口を開いた。
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