きみに初恋メランコリー
「……別に、普通だよ。特別美人ってわけでもなくて、特別秀才ってわけでもなくて」

「………」

「年上の幼なじみで、昔からずっとショートカットで、女にしてはガサツで、人のことガキ扱いしてくる」



なんでもないことのように、淡々と、彼が話す。

だけどわたしは、気づいていた。そのまつ毛が、小さく震えていること。



「……同い年の、彼氏がいて。その彼氏にも、俺のこと『幼なじみのサッカー馬鹿』って、しょーもない紹介をするような」



たまらなくなって、そこで思わずぎゅっと、先輩のワイシャツのすそを握りしめた。

気づいた先輩が、こちらを振り返る。



「……ほんとにさ。なんで俺、あんな人のことずっとすきなんだろうね」



向けられた、その小さな笑みに。

込められた気持ちを想って、胸が張り裂けそうになる。


……ああ、どうして。どうして。

このやさしい人を、神様は幸せにしてくれないの。
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