きみに初恋メランコリー
・本当は、もっと
「……休み、ですか」
「カミさんの親父さんが、急に倒れてなあ。悪いんだが、しばらく部の方はあまり顔出せないかもしれん。とりあえず明日からのことは、コーチに頼んであるから……最近練習試合も続いてたし、おまえらも疲れ溜まってるだろ。今日のところは休んどけ」
「はい。わかりました」
職員室。慌ただしく帰り支度をする監督を眺めながら、俺はこくりとうなずいた。
5限目終了後の休み時間に、いきなり校内放送で呼び出されたと思ったら……こういう事情があったらしい。
他の部員たちにはキャプテンのおまえから伝えておいてくれ、と去り際に言い残して、監督はいそいそと職員室を出ていった。
ひとつ息をつき、俺も会釈してから廊下へと出る。
そして教室に向かって足を進めながらも、スラックスのポケットから黒いスマホを取り出した。
……とりあえず、部のやつらに連絡しとくか。
最近は便利なアプリがあるわけで、同じグループの連中に一斉に同じ内容の文章を送ることができる。
スマホじゃない一部の連中にも、誰かしらが伝えるだろ。
すぐさま返ってきた反応たちを眺めながら、ふとあることが、頭をよぎる。
「………」
……一緒に、帰ったことは、なかったな。
少しだけ思案した後、俺は閉じたばかりのメッセージアプリを再び開く。
履歴から、ある人物の名前を呼び出した。