きみに初恋メランコリー
しばらく、他愛もない話をしていた。
花音ちゃんもこの家に足を踏み入れた当初よりは、幾分、緊張も和らいだようだ。
そして俺がトイレのために1度その場を離れ、再び部屋へと戻って来たとき。
彼女は座ったままベッドの方を向き、ドアを開けた俺にも気づかず、何かを熱心に眺めているようだった。
「……? 花音ちゃん、何見て──」
「へっ、あ、せんぱ……っ」
声をかけた俺にようやく気がついて、こちらを振り向く。
と、そこで俺も花音ちゃんの手元にあるものを理解し、慌てて彼女に近づいた。
「ちょっ、それはダメ! 恥ずかしい!」
「ごめんなさっ、もうちょっと~!」
言いながら彼女が隠すように死守しているのは、俺が中学のときの卒業アルバムだ。
どうやら雑誌に紛れて本棚につっこんであったものを、花音ちゃんは見つけてしまったらしい。
ジタバタと暴れる花音ちゃんに、俺も負けじと必死で手を伸ばす。
「コラコラ、いい子だから寄越して!」
「まだ先輩のこと見つけられてないんですよ~っ」
「ならなおさら没収!」
言いながら、俺はぐっと思いきって身を乗り出した。
「きゃ……」
「うわっ」
すると目の前の花音ちゃんが、アルバムを持った手を上げたまま、ぐらりと体勢を崩した。
とっさにそれを助けようとした俺自身も、勢い余って前のめりになってしまう。
花音ちゃんもこの家に足を踏み入れた当初よりは、幾分、緊張も和らいだようだ。
そして俺がトイレのために1度その場を離れ、再び部屋へと戻って来たとき。
彼女は座ったままベッドの方を向き、ドアを開けた俺にも気づかず、何かを熱心に眺めているようだった。
「……? 花音ちゃん、何見て──」
「へっ、あ、せんぱ……っ」
声をかけた俺にようやく気がついて、こちらを振り向く。
と、そこで俺も花音ちゃんの手元にあるものを理解し、慌てて彼女に近づいた。
「ちょっ、それはダメ! 恥ずかしい!」
「ごめんなさっ、もうちょっと~!」
言いながら彼女が隠すように死守しているのは、俺が中学のときの卒業アルバムだ。
どうやら雑誌に紛れて本棚につっこんであったものを、花音ちゃんは見つけてしまったらしい。
ジタバタと暴れる花音ちゃんに、俺も負けじと必死で手を伸ばす。
「コラコラ、いい子だから寄越して!」
「まだ先輩のこと見つけられてないんですよ~っ」
「ならなおさら没収!」
言いながら、俺はぐっと思いきって身を乗り出した。
「きゃ……」
「うわっ」
すると目の前の花音ちゃんが、アルバムを持った手を上げたまま、ぐらりと体勢を崩した。
とっさにそれを助けようとした俺自身も、勢い余って前のめりになってしまう。