きみに初恋メランコリー
「──、」



バサ、と、重たいアルバムが床に落ちる音がした。

でもそんなものは、気にならない。

ベッドとテーブルの間にある、わずかなスペース。そこにまるで花音ちゃんを押し倒したような状態で、固まる俺。

真下にいる彼女も、驚いたように目を見開いている。



「………」



ごめん、と。

そう言って、すぐにどければいい。

頭の片隅でそう思うのに、俺の体はまるで意思をなくしたかのように、動かない。


──見上げる花音ちゃんの茶色い瞳。床に広がる色素の薄い髪。白く滑らかな肌。薄紅に濡れたくちびる。

彼女のすべてに目を奪われて、離せない。



「せ、んぱ……」

「……花音ちゃん」



名前を呼びながら、そっと、頬に触れる。

一瞬震えて、彼女は反応しながらも……けれどその手を拒むようなことは、しなかった。

ゆっくりと、顔を傾けながら近づけていく。

眼下で、彼女が目を閉じたのを確認した。
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