きみに初恋メランコリー
そうして歩きながら、曲がり角に差しかかったとき。

不意に先輩が、再度足を止めた。

ふと隣の彼を見上げると、先輩は無表情で、まっすぐ前を向いている。

それにつられ、わたしも視線をそちらに向けた。


……そこには。



「あれー、そーちゃん?」



きょとんとした表情でこちらを見る女の人と、隣には、黒縁メガネの男の人。

繋いだ手に、少しだけ、先輩が力を込めたのがわかった。



「なにあんた、今日部活なかったの? んで着替えてるってことは、ちゃっかりお家デート? うーわ、やーらし~」



わたしたちの目の前まで来たその人たちのうち、女の人が、そう言って奏佑先輩を茶化した。

先輩は眉をひそめて、思いっきり嫌そうな顔をその人に向ける。



「そうだな、こんなところでおまえに会わなけりゃ、素晴らしいデートの終わりだったのにな」

「ははん、言ってくれるわねサッカーバカ。今度あんたの恥ずかしい昔の写真、ご近所でばらまくわよ?」

「やれるもんならやってみろよ、低能大学生」



普段からは考えられないような口調の先輩を、思わず唖然とした表情で見上げていると。



「……おまえらな」



それまで黙っていた、目の前にいる背の高い男の人が、呆れたように口を開いた。
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