きみに初恋メランコリー
・崩壊と涙
──ポーン。
ひとりきりの室内に、ピアノの音が響く。
白い鍵盤からそっと人差し指を離して、わたしはため息を吐いた。
……だめだ。こんな、暗い顔してちゃだめだ。
もうすぐここに、奏佑先輩が来るんだから……笑わなきゃ。
……笑って、言わなきゃ。
と、そこで出入口のドアが、音をたてて開く。
廊下から顔を覗かせた人物を見て、思わずつぶやきが漏れた。
「……奏佑先輩」
ドアを閉めた先輩は小さく笑みを浮かべながら、こちらへと近づいてくる。
「……ごめんね、遅くなって。来る途中、サッカー部の奴に捕まってさ」
「いえ。大丈夫です」
そう言って首を振るわたしと話しながら、先輩は、至っていつも通りの態度に思えた。
いつも通り、やさしくて。
いつも通り、穏やかで。
……だけど。
ひとりきりの室内に、ピアノの音が響く。
白い鍵盤からそっと人差し指を離して、わたしはため息を吐いた。
……だめだ。こんな、暗い顔してちゃだめだ。
もうすぐここに、奏佑先輩が来るんだから……笑わなきゃ。
……笑って、言わなきゃ。
と、そこで出入口のドアが、音をたてて開く。
廊下から顔を覗かせた人物を見て、思わずつぶやきが漏れた。
「……奏佑先輩」
ドアを閉めた先輩は小さく笑みを浮かべながら、こちらへと近づいてくる。
「……ごめんね、遅くなって。来る途中、サッカー部の奴に捕まってさ」
「いえ。大丈夫です」
そう言って首を振るわたしと話しながら、先輩は、至っていつも通りの態度に思えた。
いつも通り、やさしくて。
いつも通り、穏やかで。
……だけど。