きみに初恋メランコリー
自分の手が白と黒の上を自在に動いて、メロディを奏でる。
譜面は頭の中だ。もう何度となくなぞった旋律に、迷いはない。
閉めきった室内のぬるい空気も、鍵盤に触れたとたん感じなくなって。
今だけは、校内の喧騒も何も届かない。
溢れる音の波に飲まれながら脳裏に浮かぶのは、幼い日の記憶。
『カノン。これが、おまえの名前の由来だよ』
自分の名前の由来にもなっているこの曲は、わたし自身と、今はもういないおじいちゃんの大好きな曲だ。
いくら体調が悪くたってレッスンにだけは行きたがるくらいわたしがピアノに夢中になれたのも、おじいちゃんのおかげ。
ピアノの音色とおじいちゃんのやさしかった笑顔は、わたしの中で、いつだって直結してる。
そして無心に弾いていた“カノン”が、そろそろ中盤にさしかかろうとしたとき──。
「……花音ちゃん?」
突然、私の耳に聞き覚えのある声が届いた。
譜面は頭の中だ。もう何度となくなぞった旋律に、迷いはない。
閉めきった室内のぬるい空気も、鍵盤に触れたとたん感じなくなって。
今だけは、校内の喧騒も何も届かない。
溢れる音の波に飲まれながら脳裏に浮かぶのは、幼い日の記憶。
『カノン。これが、おまえの名前の由来だよ』
自分の名前の由来にもなっているこの曲は、わたし自身と、今はもういないおじいちゃんの大好きな曲だ。
いくら体調が悪くたってレッスンにだけは行きたがるくらいわたしがピアノに夢中になれたのも、おじいちゃんのおかげ。
ピアノの音色とおじいちゃんのやさしかった笑顔は、わたしの中で、いつだって直結してる。
そして無心に弾いていた“カノン”が、そろそろ中盤にさしかかろうとしたとき──。
「……花音ちゃん?」
突然、私の耳に聞き覚えのある声が届いた。