きみに初恋メランコリー
「……ッ、」



それはとても、綺麗な文字で。

とてもやさしい、言葉たちだった。


その文に目を通した瞬間、たとえようのない愛しさに、胸が熱くなる。

そしてふと、思い出した。

まだ俺と花音ちゃんが、偽りの関係を続けていたある日のこと。

この部屋のドアを開けた俺にめずらしく気づかず、彼女が熱心にピアノの蓋の上で、何かを書いていて。

近づいた俺の存在にようやく気がついた花音ちゃんは、俺から離すように、バッと勢いよく自分の背中に何かを隠した。

あのとき俺は、何とかしてその“何か”を見ようとしたんだけど。

だけどもあんまり必死に、真っ赤な顔で彼女がそれを隠すものだから。なんだか申し訳なくなって、見せてもらうのを諦めたんだ。
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