きみに初恋メランコリー
・11個目の秘密
「……え……」
奏佑先輩との思い出の詰まった、あの部屋のドアを開けた瞬間。
中から聞こえてきた声に、思わず、うつむきがちだった顔を上げた。
「……ッ、そ……」
上げて、驚く。
だって、目の前に、いたのが──……もう2度と関わってはいけないと、思っていた人だったから。
先に行動を起こしたのは、目の前の人物の方だ。
わたしと同じ、驚いたような表情をしていたその人によって、左手首を掴まれる。
そして、強い力で思いきり引き寄せられた。
不意打ちのことに逆らえず、抵抗する間もなくその胸の中におさまる。
背中の方でドアが閉まる音を、呆然と聞いた。