きみに初恋メランコリー
「あ、あの先輩、3年って……?」

「……フランスに、留学するんでしょ。3年間」

「ち、違います……!」



え、と、先輩が驚いたように口を開けた。

わたしはまた、続ける。



「3年だなんて、そんな長い期間じゃないですよ。留学期間は、1ヶ月です」

「……え」

「それに、『いきなり』って……? フランスへは冬休みに被せて行くつもりなので、だいたいあと、2ヶ月近く時間があります」

「え……ちょ、ま……」



なんだか混乱した様子で、先輩は自分の片手を頭の横にあてた。

不思議に思いながら、わたしは彼を見上げる。



「先輩、誰にその話聞いたんですか?」

「え……誰ってあの、前に花音ちゃんが、中庭で揉めてた男子……」

「刹くん、ですか? 刹くんなら、わたしの留学の話も、詳しく知ってると思うんですけど……」



わたしの言葉を聞いてなんだか衝撃を受けたような顔をしながら、先輩が固まった。

だけどすぐ、きょとんとするわたしの頭上で、ぎり、と、歯を食いしばる。
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