きみに初恋メランコリー
ふと、ふたりの視線が絡まる。

それが合図だったかのようにお互い目を閉じて、吸い寄せられるように、くちびるを重ねた。

離れてから、ふたりで笑い合う。



「ねぇ、そういえば、花音ちゃん」

「はい?」



不意にそう言った奏佑先輩に、首をかしげた。

先輩はイタズラを思いついた子どものような表情で、わたしのことを見つめている。



「あのルーズリーフの、書きかけだった11個目。今直接、聞かせて欲しいな」

「え、ルーズリーフ?」

「これ」



言いながら彼が、ぺら、と目の前に掲げたものを見た瞬間。

わたしはきゃーっ!と、思わず悲鳴を上げた。



「そっ、それっ、どこで……!」

「ピアノの下に落ちてたよ。ツメが甘いなあ、秘密は最後まで隠し通さないと」

「かかっ、返してくださいーっ!」

「ダーメ。これはもう、俺のもんだから」



わたしが必死で手を伸ばしてその紙をひったくろうとしても、先輩は余裕の笑みを浮かべて、軽々とかわす。

それからもはや真っ赤な顔のわたしの手首を、簡単に掴まえて。またぎゅっと、わたしを抱きしめた。
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