きみに初恋メランコリー
と、そこで俺たちを現実へ引き戻すように、予鈴が鳴り響いた。



「あ……」

「あー、鳴っちゃったね。教室戻んないと」



次の授業なんだっけな、たしか古典だっけ? ……絶対眠いな……。

首の後ろに手をかけて軽くため息をついていると、「あ、あの……」と後ろから控えめな声が聞こえてきた。



「ん?」

「あの、えっと、もしよかったら……」



言いながら視線を泳がせていた花音ちゃんが、パッと顔を上げる。



「もし、よかったら……っ、また、ここに来てもらえませんかっ?」

「え?」



突然の申し出に、今度は俺の方が思わず目を丸くする番だ。

また、ここに? 俺が来ていいの??



「えと、やっぱり、聴いてくれる人がいるとうれしいので……」

「ああ、そっか」



そうだな、たしかにただ弾いてるだけじゃもったいない。

ここの雰囲気落ちつくし、花音ちゃんのピアノも心地いいし。
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