きみに初恋メランコリー
♩︎*゚Track:2
・プレリュード
いちばん、はじめの日。
たぶんもう、最初に会話をしたあのときから、始まっていた。
「へぇ……花音にしては、がんばったのねぇ」
感心したような表情のしおちゃんに、こくこくと余裕なくうなずく。
今は、5限目と6限目の間の休み時間。わたしは先ほどの昼休み中にあった出来事を、さっそくしおちゃんに報告していた。
あれからずっと気分が高揚していたけれど、話をしたことで少しだけ冷静になれた気がする。深く、息を吐き出した。
「まさか、ほんとにまた会えるなんて……」
「しかも、あの空き教室でまた会う約束をしたって? いきなりすごい進歩じゃない」
「う、うん……」
また、あの奏佑先輩に会えた。
それに、わたしのピアノをほめてくれた。
ほんとにもう、こんなのって夢じゃないのかなあ……。
机に頬杖をついてぼんやりと空中を見ながら、わたしはそんなことを思う。
すると傍らに立つしおちゃんが、何かを決心したようにひとつうなずいた。
「よし、せっかくここまでこぎつけられたならオトすしかないわね。そのソースケ先輩、全力で狩りましょ」
「か……!?」
刺激的なセリフに、思わず目を剥く。
しっ、しおちゃんってばそのビューティーフェイスからなんて言葉を……!
「いーい、恋愛ってのは積極性が重要なの。純情ぶっていつまでもオロオロしてちゃあだめなのよ」
「『純情ぶって』ってしおちゃんそんな……」
さすが、社会人の彼氏を持つ彼女は言うことが違う。でもそれ、恋愛初心者のわたしにはハードル高すぎです……。
その後も、しおちゃんからの容赦ない厳しい恋のアドバイスはしばらく続いて。
……とりあえず今は、またあの人に会えただけで、十分なんだけどなあ……。