きみに初恋メランコリー
◆ ◆ ◆
ドアの前に立って、ひとつ深呼吸をする。
わたしは意を決して、目の前の引き戸に手をかけた。
「……あ、花音ちゃん」
視界が開けた瞬間見つけた笑顔とやさしい声に胸が高鳴って、同時に、思わずほっと口元が緩む。
──夢じゃない。
ほんとに、来てくれた。
ドアを閉めながら、わたしは窓際に寄せた椅子に座っている奏佑先輩へと近づく。
「職員室に鍵を借りに行ったら、『今日は先客がいるよ』って先生に言われて……」
「はは、うん。ちょっと驚かせてみようかなって」
ハイ、と笑顔のまま差し出された手から鍵を受け取って、わたしはそれをぎゅっと握りしめた。
今、自分の前にあのときの彼がいるという事実に……ドキドキしすぎて、倒れてしまいそうだ。