きみに初恋メランコリー
「そ、そんな、これはわたしの問題だから、先輩が気にすること……」

「んーでも、一応そのこと知っちゃってるわけだし。できる限りの気遣いはするよ」



言いながら先輩は、さっきまでわたしが腰かけていたピアノの椅子に座った。

そしてそのまま、じっと傍らのわたしを見上げてきて。

ドキン、と、反射的に鼓動が高鳴る。



「先輩………?」

「……気になってたんだけどさ、花音ちゃんの男に対する苦手意識って、何がキッカケでなっちゃったの?」

「──え、」



予想外のその疑問に、思わず固まってしまった。

すぐに奏佑先輩が、ハッとしたように口を開く。



「ごめん花音ちゃん、踏み込んだこと訊いちゃったね! 言いたくなかったら、別に……っ」



そう言って慌てたように両手を顔の前で振る先輩が、なんだかかわいく見えて。

わたしはつい、不謹慎にもふっと笑みを漏らしてしまう。
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