きみに初恋メランコリー
「ったくもー、少しはスポーツマンらしくキビキビ返事できないもんかなぁ」

「別に、俺だって相手選んでるだけだし」

「かーっ、ムカつくねぇ」



言いながらまどかは、自転車を押す俺の後ろをついてなぜかうちの門をくぐってくる。

訝しんで眉を寄せながら振り向くと、にっこり笑顔を返された。



「今日うち、お母さんいなくてさあ。お父さんも帰り遅くなるから、そーちゃんちのおばさんが夕飯食べにおいでって」

「……彼氏といたんなら、一緒にメシ行けばよかっただろ」

「んー、アイツ今日このあと用事あるみたいなんだよねぇ」



そう言うとまどかは、家の鍵を開けた俺よりも先に中へと足を踏み入れて「おばさーん、こんばんはー!」なんて慣れたように家に上がる。

深い息を吐いて後ろに続きながら、それでも、彼女の訪問を確かによろこんでいる自分がいて。

いい加減、諦めの悪い自分に苛立つ。俺は帰宅の挨拶もせずに、自室へと向かった。
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