きみに初恋メランコリー
◆ ◆ ◆
もう何度となく歩いた校区内の道を、いつもより足早に歩く。
今日の掃除当番が思いがけず長引いて、部活へ向かうのがすっかり遅くなってしまった。
「もうみんな、集まってるよな……」
ひとりごちながら、6限目のホームルームで行った風紀検査のためにきっちり締めていたネクタイを、足を止めないまま緩める。
えぇっと、今日の練習メニューはなんだっけ。
たしか部活終わりに、来週練習試合をする南高校の対策会議やるんだよな……いつも以上に、帰りが遅くなりそうだ。
「──それじゃあ、私は職員室にいるから。一通り校内を見学したら、また訪ねて来てください」
「はい、わかりました」
頭の中では部活のことを考えつつ、そんな会話が、角の向こうから聞こえてきたのには気づいていた。
だけど先を急いでいた俺は、それを気にも留めずに……外したネクタイをズボンのポケットにしまいながら、そのまま角を曲がりかけて──。
「ッ、うわっ」
「うお!」
ちょうど反対側から来た誰かと、正面からぶつかってしまった。