きみに初恋メランコリー
ぴたりと、あるページでわたしはめくる指を止めた。

それは、たぶん幼稚園の頃──ピアノの前に座るわたしの傍ら、大好きだったおじいちゃんが、笑顔でわたしの肩に手を乗せている写真だ。

日本に住んで長くて、とっても流暢な日本語を話していて。

いつだって快活で若々しくて、生やしたひげがかっこよくて。

そして誰よりも、音楽を愛していたひと。

急におじいちゃんに会いたくなって、つい、アルバムを手に取ってしまったのだ。



『こんなに小さくてかわいい花音にも、いつかすきな男の人ができて、お嫁に行っちゃうなんて。おじいちゃんさみしいなあ』



一緒にピアノを弾いてるときや、お母さん手作りのお菓子を食べているとき。

ふたりでお母さんたちには内緒で露店アイスを買ったときや、わたしが上手く弾けない、とピアノを前にして泣いているとき。

おじいちゃんはよく、そんないつになるかわからないことを、それでもニコニコと変わらない笑顔で話していた。
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