きみに初恋メランコリー
・フェンス越しの彼女
だって。
どうしたって、放っておけないんだ。
「……あれ? 花音ちゃん?」
今日もハードな部活の休憩中。
ふと目を向けたフェンスの外側に見知った顔を見つけて、思わずつぶやいた。
そこにはなんだかぼんやりした様子でフェンスに手をかける、花音ちゃんが立っている。
俺はタオルを手にしたまま、彼女へと近づいた。
「花音ちゃん!」
「え……っあ、奏佑先輩」
声をかけた俺にハッとしたように、花音ちゃんが目をまたたかせる。
その反応は、ほぼ正面から近づいたにも関わらず、まるで今さっき俺の存在に気がついたかのようで。
俺はつい、首をかしげた。
「花音ちゃん、なにかあった?」
とっさに出てきてしまったその問いに、彼女は一瞬目を丸くする。
だけどもふるふると、首を横に振った。
「いえ、……どうしてですか?」
「や、なんとなくね」
そっか、うん。気のせい、かな。
なんとなく、まだ釈然としないながらも。気を取り直して、俺は花音ちゃんに向き直った。