きみに初恋メランコリー
「こんにちは。俺はサッカー部副部長の本間和希(ほんまかずき)です。よろしくね、花音ちゃん」

「花音ちゃん、別によろしくしなくていいからね。こいつのことなんてスルーしていいから、スルー」



よく女子たちにキャーキャー言われている、胡散臭い笑顔。

それにかぶせるよう、負けじと俺もにっこり笑顔で続けたセリフに、本間の顔が若干引きつる。



「おま、ハセ、ひでぇこと言うなよ」

「うるさいなー。おまえみたいのが近くにいたら、花音ちゃんがケガレる」

「おいコラどーいう意味だよ」

「そーいう意味だよ」

「ナニソレ、悪意しか感じられないんだけど」

「よくわかってんじゃん」

「なんだよそのやたらイイ笑顔は」

「……ふふ、」



と、毎度のごとく本間と続けていた不毛な言い争いの最中に、控えめなかわいらしい笑い声が入ってきた。

見ると花音ちゃんが口元に手をあてながら、くすくすと小さく肩を揺らしている。

その様子が可憐で、それから綺麗で。……思わず一瞬、見とれてしまった。


そしてどうやらそれは、隣の本間も同じことだったらしく。

俺たちふたり分の視線に気づいたらしい花音ちゃんが、ハッとしたように顔を上げた。
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