きみに初恋メランコリー
「本間?」

「いやー、だってさ。花音ちゃんみたいなコがマネージャーでいたら、部員の士気も上がるだろうし」



悪びれるでもなく、あっさりと本間が言った。

まあ、それはわかる。わかるけど。



「だからっていきなり……」

「ね、どう? 花音ちゃん、やってみない?」

「え、えっと……わたし、なんかじゃ……」



そう小さく言ってうつむく花音ちゃんの表情に、少しだけ、引っかかりを覚えるも……すぐにまた、隣の本間が口を開く。



「そんなことないって、絶対花音ちゃん、向いてるよ」

「あの……えっと、」

「ね、とりあえず1度見学に来てさー」



グイグイ押しまくりの本間に、戸惑う花音ちゃん。

俺はふぅっと、息を吐いて。

片手を腰にあてつつ、本間に呆れた視線を向ける。



「あのなー本間、いきなりそんなん言われたって、花音ちゃん困るに決まってんだろ」

「でもよ~」

「それに……花音ちゃんには、もう大事なものがあるもんね?」



にこりと微笑んで、今度は彼女に顔を向けると。

花音ちゃんはほっとしたように眉を下げ、小さく笑みを浮かべてうなずいた。



「……はい。なので、せっかくなんですけど……」

「そっか~、残念」



本当に残念そうに肩を落として、それからなぜか本間は、俺にうらめしげな視線を寄越してくる。



「ちぇー、なんだよ、ふたりして通じあってるみたいな感じ出して」

「まあ、少なくともおまえよりはな」

「コラコラコラコラ」



と、そこで俺は、ちらりと後ろの方の様子をうかがった。
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