きみに初恋メランコリー
「ほら本間、そろそろ休憩終わりそうだから戻るぞ」

「へいへい」



すっかり消沈してしまったのか、言うが早いか「じゃあね花音ちゃん」と手を振って、本間はさっさとベンチの方へと戻ってしまった。

なんだありゃ、と若干呆れてその背中を見送った俺は、改めて花音ちゃんに顔を向ける。



「騒がしいヤツで悪いねー。じゃあ、俺も戻るよ」

「いいえ、おもしろい人ですね。……あの、休憩中だったのに、わざわざすみませんでした」

「いやいやそんな、こっちが勝手に話しかけたんだから、気にしないで」



そうして、俺は別れの挨拶を切りだそうとした。

だけどもそれは思い直し、じっと、花音ちゃんの顔を見つめる。



「先輩?」

「……ねぇ、花音ちゃん。本当に、何かあったの?」



目を逸らさないままの、その、俺の問いに。

彼女は少しだけ目を伏せて、逡巡するようなそぶりを見せたけれど。

だけどやはり、小さく笑って首を横に振った。
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