きみに初恋メランコリー
「何でも、ないですよ。……でも、ありがとうございます、奏佑先輩」

「……そっか」



こんなふうに言われてしまっては、これ以上は食い下がれない。

釈然としないながらも、俺はうなずく。



「それじゃあ、俺も行くね」

「はい。練習、がんばってください」

「ありがとう。また、今度ね」



そんな当たり障りのない会話をして、部員たちのいるところへと駆け足で戻りながら、考える。

……たぶん、何でもないってことは、ないと思うんだけど。

でもまあ、仕方ないよな。本人が、ああ言ってるんだから。


そこまで無意識に、まるで自分に言い聞かせるように思案していることに気がついて……俺は思わず、思考を振り払うため首を振った。


……これ以上、あのコに近づくべきじゃないって、思ってるのに。

なんだか自分の方から、関わりに行ってしまっているような気がする。


俺はひとつ息をついてから、パンッと小気味いい音をたてて両手で頬を叩く。

仲間のもとに向かう足を、心なし速めた。
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