きみに初恋メランコリー
「ダメだ花音ちゃん、こうさーん」

「ふふっ、わたしの勝ちですね」



楽しげにそう言って、花音ちゃんはメロディを止めた。

俺は伸びをしながら「負けたー!」と叫んで、正解の発表を待つ。



「わたしが弾いたのは……ジブリ映画の『魔女の宅急便』の中に出てくる、『海の見える街』という曲です」

「ああーっ!!」



とたんにピンときて、思わず声を上げた。

そんな俺の反応に、また彼女はくすくすと笑う。



「正解聞いて、思い出しました?」

「うん。いや、でも……どっちにしろタイトルはわかんなかったかも。映画はなんとなくわかるんだけどさー」

「先輩も、『魔女の宅急便』とか観るんですね」



彼女のその言葉に、思わず苦笑した。



「や……ていうか隣の家に住んでる幼なじみがジブリ好きで、小さい頃よく一緒に観せられてたから」

「へぇ……」



自分からつい、口にしてしまった話題。

だけどすぐに話を逸らしたくて、俺はわざとらしく唸ってみせた。
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