きみに初恋メランコリー

私のことなんかまるで眼中にない様子で花音に話しかける進藤 刹と、若干困ったように受け答えをする花音を、交互に見る。

それから改めて、深い息を吐いて。

私はツカツカと、その男に近づいた。



「……ちょっとアンタ、そのツラ貸して」

「は？！　んだよおまえ」

「えっ、しおちゃん？！」



困惑するふたり分の声は綺麗にスルーして、私は進藤 刹の腕をわし掴んだままずんずんと歩く。



「あ、花音はちょっとそこで待ってて。すぐ終わるから」



途中で振り返りながら、花音にはにっこり笑顔。

そして進藤 刹には、『黙ってついてこいよ』という無言の圧力を全面に乗せた睨みを送って。

私はそのまま、渡り廊下の向こう側まで足を進めた。