きみに初恋メランコリー
「いいんだよ、しおちゃん。わたしが勝手に勘違いして、浮かれてただけなの。もしかしたら先輩には、わたしと一緒にいて誤解されたくないような人が、いるのかもしれないし」

「花音」



何か言いたげなしおちゃんの様子に知らないフリをして、わたしは続ける。



「しおちゃん……わたし、気づいたんだ。奏佑先輩のこと、何も知らないんだって」



言葉にすると、その事実はますます心に重くのしかかった。

比例して、わたしの顔が自然にうつむく。



「……何も、知らないの……」

「……花音」



そのときタイミングよく、6限目の始まりを告げるチャイムが鳴る。

やはり腑に落ちないような表情で、それでもしおちゃんは、自分の席へと戻って行った。

現国の教科書を机の中から出しながら、わたしは考える。

……もしかしたら、この恋は。

自分が思っている以上に、難しいものなのかも、しれないと。
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