きみに初恋メランコリー

・捨てられない気持ち



「長谷川。やっぱ俺、海行けないわ」



自販機で飲み物を買って戻ってきたと思ったら、開口1番乾はそう言った。

俺は思わず、ちょうど飲もうとしていたスポーツドリンクのペットボトルを口から離す。



「え、マジ? やっぱ部活ある?」

「まあ、そんなとこ」



そう言って乾は、俺の隣の席に腰を下ろした。

偶然にも、こないだの席替えで俺たちは隣同士になったばかりだ。


……うーん。乾が行けないとなると、誰誘おうかな。

俺が仲良いヤツ、だいたい運動部だし……休み少ないんだよなぁ。

いっそのこと、同じサッカー部のヤツ誘うか?


俺が無言でそんなことを考えていると、乾が買ってきたばかりのブリックにストローを刺しながら、「つーか、」とまた話し始める。



「さっき下で、おまえが約束してる月舘さんと会ったけど。あのコも、一緒に海行く友達捕まんないっつってたぞ」

「……え?」

「いっそのこと、おまえらふたりだけで行って来りゃいーじゃん」



なかなか肺活量があるのか、ペコリと、乾の持つブリックが早々にへこむ。

ああ、そっか、花音ちゃんも友達集めてこずってんのか。

……だけど今の俺が引っかかっているのは、そこではなくて。
< 98 / 234 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop