きみに初恋メランコリー
・捨てられない気持ち
「長谷川。やっぱ俺、海行けないわ」
自販機で飲み物を買って戻ってきたと思ったら、開口1番乾はそう言った。
俺は思わず、ちょうど飲もうとしていたスポーツドリンクのペットボトルを口から離す。
「え、マジ? やっぱ部活ある?」
「まあ、そんなとこ」
そう言って乾は、俺の隣の席に腰を下ろした。
偶然にも、こないだの席替えで俺たちは隣同士になったばかりだ。
……うーん。乾が行けないとなると、誰誘おうかな。
俺が仲良いヤツ、だいたい運動部だし……休み少ないんだよなぁ。
いっそのこと、同じサッカー部のヤツ誘うか?
俺が無言でそんなことを考えていると、乾が買ってきたばかりのブリックにストローを刺しながら、「つーか、」とまた話し始める。
「さっき下で、おまえが約束してる月舘さんと会ったけど。あのコも、一緒に海行く友達捕まんないっつってたぞ」
「……え?」
「いっそのこと、おまえらふたりだけで行って来りゃいーじゃん」
なかなか肺活量があるのか、ペコリと、乾の持つブリックが早々にへこむ。
ああ、そっか、花音ちゃんも友達集めてこずってんのか。
……だけど今の俺が引っかかっているのは、そこではなくて。