やく束は守もります
遮るものさえないほど、星々はくっきりと見えるのに、なぜかいつもよりも遠く感じる。
そんな夜だった。
煌めきの中をスキップしたくなる昼間が嘘のように、音さえ凍る夜だった。
畳んだダンボール箱はそれなりに厚みがあったけれど、それ自体がパリパリに凍ったみたいに冷たい。
座っていたらお尻が冷えるので、ふたりはやむなくしゃがんだ体勢を取った。
それでもすぐに曲げた足首や膝がキシキシと痛み、時折立って身体を動かす。
立ったら立ったで寒く、すぐにしゃがんで身体を抱え込む。
その繰り返しだった。
ドドドドドドドッ、と音がして、香月の隣で雪煙が上がる。
屋根から雪が落ちたのだ。
ビクンと震えて、声も出せずに驚いた香月の帽子は、白く染まっていた。
「カズキ!大丈夫?」
「・・・びっくり、した」
帽子を脱いで雪を払う香月の腕を引き、自分のいた場所と入れ換える。
しかし車庫の雪はどこも積もっていて、安全だと思える場所はなかった。
梨田は少し後悔し始めた。
香月を連れてきたことではなく、十分な準備ができなかったことに。
膝に顔を埋めるようにして耐える香月を、どうにかあたためてあげたいけれど、何の手立てもない。
自分の着ているスノーウェアを香月に譲ろうか。
そんな殊勝な考えも、首筋から入り込む冷気の前に打ち砕かれた。
「星、きれいだね」
上目遣いで空を見上げる香月のまつげには、細かな雪のひとひらが溶けずに残っていた。
まばたきするたび、その雪も一緒に瞬く。
それを見ていた梨田は、なぜか泣きたくなった。
夜空はあまりに遠く深く、あれが〈空〉ではなく〈宇宙〉なのだと、初めて理解できるようだった。
ふたりは宇宙の底にいた。
宇宙の底で、たかが小学生の梨田にできることは何もない。
あまりに無力だった。