お見合い相手は無礼で性悪?


背の高い彼が首を傾けて笑う先に
ショートカットの女性が見えた



・・・・・・うそ


見間違いかもしれないと少し勇気を出して覗いてみても


結果は同じで、彼が女性と一緒にいることを確認しただけだった




彼を見上げるその人と
女性に目線を落とし笑顔を向ける彼

さっきまでの高揚感が奈落に落ち
嘘みたいに動悸が強く打つ

何度も何度も顔を見合わせ話しをする姿に
やりきれない思いが沸く


私とこんな風に笑って話したことがあっただろうか・・・


手も繋がない、目も合わせない
並んで立つこともないから
私は彼の背中ばかりを見ている

前に並ぶ学生達のお喋りの合間に
途切れ途切れに聞こえる笑い声が妙に切なく響いて

ここに居てはいけないと思った


・・・帰ろう


そうは思ったものの
この二人と鉢合わせる勇気もなくて

ひたすら俯いて時を過ごす


二人が見えなくなったら帰ろう

覚悟を決めた私に追い討ちをかけてきたのは
苦しい現実だった



『ねぇ、誕生日なのに映画でいいの?』


『あぁ、いいさ』


彼の誕生日を
こんな形で知るとは


考えもしなかった

それに・・・
誕生日に婚約者とは別の女性と一緒にいる彼




呆然としたまま、どこをどう歩いたのか

気がついた時にはベッドの中で子供みたいに声を上げて泣いていた



泣く程彼のことが好きなの?

たった1回のキスで
彼は自分を好きだと思ったの?


・・・世間知らずのお嬢様


彼に言われる度に頬を膨らませたけれど
確かに私は世間知らずのお嬢様だわ


身体中の水分が涙になってしまったみたいに泣いて


泣き疲れて・・・


父に二度目の婚約破棄を伝えたのは


酷い形相のままだった










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