お見合い相手は無礼で性悪?
親から与えられた相手と
疑似恋愛したと思えば良い
そう・・ままごと遊び
自分に都合の良いように頭の中を切り替え
また、元の生活に戻るつもりだった
そんな私に、父から伝えられたのは
『一翔君、訳も分からず婚約破棄なんて認めないと・・』
予想を裏切る彼の言葉だった
・・・訳も分からない?
湧き上がる苛立ちそのままに父に抗議するも
『大人なんだから、ちゃんと訳を話しなさい』
まるで相手にされなかった
単なる私のワガママなの?
政略結婚なんだから
他に女が居ても気にするなって?
そこまでして・・
娘を犠牲にしてまで守りたい会社?
そう言いそうになるのを必死で堪える
父が部屋から出て気分が落ち着いてくると
全てが馬鹿馬鹿しく思えてきた
政略結婚の相手に
嫉妬するなんて・・・恥ずかしい
自室に篭ったまま
両親の呼びかけにも応じず
ベッドに潜り込んだ
・・・
けたたましく鳴る携帯電話に起こされ
知らない番号に躊躇いながら耳に当てる
『本日、ベッドの搬入日でして・・・』
・・・あっ
新居にベッドが入る日
忘れてた・・・
運搬業者さんは既にマンションに到着している様子で
腫れた目を隠す為に大きなサングラスをかけ
マンションへと向かった
『ありがとうございました』
あっという間に搬入は終わった
セミダブルのベッドが二つ
出来るだけ離して据置するように注文した通り
サイドテーブルを二つ挟んでベッドが置かれた
・・・ハァ
私の意に反して主を待つのみに仕上がった家
ベッドに腰掛けると更に気分も滅入る
・・・帰ろう
マンションを出てデパートへ向かった
気分を上げるために自分にご褒美を与えることにした
大好きな地下食料品売り場で
焼きたてのクロワッサンを購入して
カウンター6席だけの
フルーツパーラーに腰掛ける
子供の頃からお気に入りのこの店は
選んだフルーツを目の前でジュースにしてくれる
毎回なににしようと悩むけれど
結局注文するのはパインジュース
クロワッサンの良い匂いと
フレッシュなパインジュース
ご機嫌も少し直りかけた私に
『愛華さん?』
聞き覚えのある声がかかった
『・・・トレーナー』
『やっぱりそうだ!またパインジュースですか?』
トレーナーはニッコリ笑って隣に座ると
『同じものを』とパインジュースを注文した
『どうしたの?』
久しぶりに会うトレーナーは
仕事終わりの寄り道らしい
『ここの七階に新店が入って・・』
トレーナーの話に引き込まれ
誘われるままにショップへと足を運んだ