お見合い相手は無礼で性悪?
『なぁ』
私が核心に触れないまま別れようとしていることを阻止するかのように詰め寄る彼
経験値の足りなさは
こんな場合の打開策も浮かばせない
決定的な話を聞かずに済むのなら
このまま別れたほうが
お互いに深く傷つかずに済む
いや・・・
私は自分が傷つかないように
予防線を張っているだけなのかもしれない
黙ったまま何も言わない私を見て
彼は呆れたようにため息を吐いた後
『あのさ、君は僕に興味なくても結婚出来るかと聞いたけど、興味ないのは僕じゃなくて君!』
真っ直ぐ私を射抜いた
『・・・え』
『いつも自分のことばかりで、これだからお嬢様は困る』
呆れたような声に強張っていた身体の力が抜けた
『本当は聞きたいんじゃないのか?
映画館で一緒に居た子のこと・・
あれだけ挙動不審で、気付かれていないとでも思った?』
・・・っ
脱力したはずの背筋が伸びた
『知ってたの?』
まさか気付かれてるとは知らなくて
あの時の自分を思い出すだけで
恥ずかしさに耳まで熱を持つ
だからという訳ではないけれど
一番聞きたかったことを口にする勇気が出た
『あの女の人は・・誰?』
そう聞いた私に、満足したのか
『あれは妹』
彼は一度クシャクシャと前髪を崩してフッと笑った
『・・・いもう、と?』
言ってる意味が理解出来ない
妹さんなんて・・・
『ほら、どうせ釣書も見てなければお見合いの席の話も適当に聞いてたんだろ?』
釣書を見なくても充分過ぎるほど両親が話していたから
知らないことはないと思っていた
確かに・・・
両親の話題はお兄さんのことが多くて
私が思い込んでいただけ、ということになる