お見合い相手は無礼で性悪?
父の会社は以前ブティックだったビルを買い取ったこともあり
前面硝子張りのオシャレな雰囲気で

時折ショップと間違えて入ってくる人もいる程

社名が入った自動ドアを入ると
アフリカの作家が制作したオブジェが待つ風除室
そこはヒールが埋もれそうなマットが敷かれている

もう一つ自動ドアを入ると
正面に受付嬢が口角を上げて座っている


『お疲れ様~』


頭を下げる受付嬢に手を振り
エレベーターに乗り込むと
最上階のボタンを押した


私が働いているのは5階、総務部のフロア

大学を卒業してから社会勉強の為にと
トレーナーがつけられサポート体制は万全

・・・濱田トレーナーにケーキ

今日は会議がないから役員もそう居ないはず

余ったら呼べば良いかと

ケーキの個数を考えていると
最上階で扉がゆっくりと開いた

この階だけは重い雰囲気で
深い色合いの扉が更に空気を重くしている

社長室のドアをノックすると
秘書の清水さんが笑顔で迎えてくれた

『はい、ケーキ。食べたいから出して』
清水さんに強引に持たせると


『お嬢様、今、来客中で・・・』


最後まで言葉を待たずに勢いよくドアを開いた

父と専務さんと、見知らぬ二人

『おぉ、愛華。良いところに来たなぁ』
立ち上がって手招きする父に近づくと
不躾に突入した非礼を詫びるように

『はじめまして』
笑顔で挨拶した


『大きくなって益々美人になったなぁ』


小太りの年配の男性が
私のことを知っている風にしきりに懐かしがる


父に助け舟を求めると

『こちらはTIコーポレーションの鈴木社長と息子さんの一翔君だ
愛華と一翔君は子供の頃に会ってるはずだけど』


・・・会ってる?


その言葉に記憶を呼び戻そうと
鈴木社長の隣に座る彼を見るけれど
私の視線に気付いているはずなのに
1ミリもこちらを見る素振りがない


・・・感じ悪い
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