お見合い相手は無礼で性悪?
『パーティーの途中って・・・
また喧嘩したの?』
落ち着き過ぎて母は鋭くなったようだ
『喧嘩?違うわ!あっちが喧嘩を仕掛けてきたのよ?
もちろん喧嘩なんて買わずに文句だけ言って帰ってきたの!』
私の話を聞きながら呆れた顔になった母も
『それが喧嘩って云うんじゃなくて?』
最後には笑っていた
『とりあえず愛華さんは先に帰ったと電話しなきゃ』
母はもう相手方と番号交換しているのだろう
握りしめた携帯電話をかけ始めた
・・・あのままどこへ?
自分が言い過ぎたから
どこかへ行ってしまったのだろうか?
少しずつ不安になる気持ちが気分を落としてくる
・・・新居?・・・違う、鍵を渡してないもの
落ちた気分は不安を膨らませるから
私ができることをしてみようと思い直す
支度を済ませるとマンションへ車を走らせた
駐車場も二台分空いたまま
・・・ここに来る訳ないよね
駐車場側からエントランスへと入りエレベーターホールへ向かおうとして
コンシェルジュのカウンターに誰も居ないことに違和感を抱いた
そんな私の目に、正面入り口の自動ドアの遥か向こうに
少しの人集りが見えた
メールボックスを確認して引き返す
・・・まさか、ね
もう一度自動ドアの所で立ち止まり
人集りを見ると
住人とコンシェルジュだろうか三、四人の人の人
その人の間に微かに見える
スーツ姿の男性に息を飲んだ
『・・・うそ』
あれは、間違いなく彼だ
自動ドアが開くのも待ちきれないほど慌てて
人集りに駆け寄れば
植え込みに座る彼が見えた
『一翔さん?』
蹲み込んで声を掛けると
その虚ろな目は私を映してはくれず
代わりにガックリ項垂れた彼から
『あ、君か』消えるような声だけが返ってきた
辺りに漂うお酒の臭いに
少し彼を追い込んだことを知った
反応のない彼に気付いた住人がコンシェルジュを呼んで
救急車を呼ぼうとしていたところらしい
ひとまずそれを断って
周りの人達に丁寧にお礼を言うと
頭一つ分大きい彼を支え
一生懸命部屋まで歩かせた
着くまでの間
『僕はここの鍵を渡されてない』とか
『僕と一緒にいるより笑ってた』とか
延々と聞かされる恨み節は
酷くお酒の臭いがした
それでも許せる気持ちになるのは
勇輔君とのことを妬いてくれていたという事実で
こんなに飲み過ぎた彼を責める気にはならなかった
『フゥ』
彼用のベッドに寝かせた後で
なんだかホッとして笑ってしまった
・・・電話
急いで母に連絡すると彼の家族に連絡すると安堵していた
寝室の扉をソッと開く
寝息を立てる姿にもう一度笑いが出た
綺麗にセットしていたはずの髪もボサボサ
スーツに着いた泥と草
・・・起きたらシーツを洗わなきゃ
自然に目が覚めるまで寝かせてあげようと
リビングルームで待つことにした