お見合い相手は無礼で性悪?




手を繋いでデパ地下を歩く

ただそれだけがとても楽しい


いい匂いと盛り付けに足を止めるたび


『これ食べたい』


『こんなの好き?』 


『お肉は何グラム食べられそう?』


何度も顔を見合わせ
お互いの好みを確認するように買い物を続ける

少し低くしたヒールのお陰で
彼のペースに合わせて歩ける

またも彼の片腕には沢山の袋が下げられた

間違いなく私には持たせないだろうけれど
両手で持てば楽なのにと繋いだ手を外そうとしてみても

財布を出す時以外はしっかり繋いだまま
またすぐ繋がれる手に

諦めたのは私の方だった


少しずつ彼の体温に馴れるみたいに
彼との距離がまた縮まった気がした





・・・




デパートで買い物した大量のアイテムは
コンシェルジュにも手伝ってもらって部屋まで運び込んだ


そこからは二人で確認しながら
家の中に収まった


お肉以外はデリカコーナーのお惣菜で

作るとは名ばかりの
二人きりのディナーも済ませた


シンとすると間が持たなくて
やたらとテーブルを拭いてしまう

それも変に思われたくなくて


『コーヒー飲む?』


ソファでくつろぐ彼に声を掛けた


『じゃあ、僕が豆を曳くから』


お互いにコーヒー好きだと分かり
デパ地下のコーヒーショップで手動のミルと豆を購入した

買ったばかりの大きめのマグカップを出して
サーバーのお湯で温める間に

彼が香りを立ててコーヒーを煎れる


『疲れただろ?これ飲んだら先にお風呂に入ったら?』


『・・・え』


有難いと思ったのは僅かで
頭を過ぎったのは
お風呂→スッピン→裸→無防備
リアルな現実だった


『私、髪も長いから時間がかかるの
一翔さん先に入って先に休んで・・』


優しさの押し売りのような提案にも


『クッ、警戒マックスだな。ま、良いけど』


彼はクスリと笑って、私の頭を撫でると
扉の向こうに消えた・・・


スーーッと大きく深呼吸

こんなの慣れるはずがない


・・・私、こんな風で結婚出来るのかしら


頬を両手で挟みこむと

頬の熱さに比例するように
高鳴る鼓動の強さを感じた


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