お見合い相手は無礼で性悪?
『少し、話そうか』
彼の呼びかけにも返事をせず
強く打つ心臓の心配する
『寝たのか?』
逃げてもいられない事態に
『きょ、うは、疲れたのでおやすみなさいっ』
振り絞るように出した声は
自分でも驚くほど大きくて震えていた
てっきり茶化されるかと構えたのに
少しだけ笑った彼は『おやすみ』と諦めてくれたようだった
・・・
緊張からなのか
眠りの浅さに何度も何度も目が覚める
その度に微かに聞こえるのは彼の寝息
四度目に目が覚めてからは
遂に眠れなくなった
静かにベッドを抜け出す
リビングルームに入るとミネラルウォーターを持ってソファに腰掛ける
壁の間接照明だけの空間は
不思議と居心地が良かった
壁の時計が3時を少し回った頃
カチャリと扉の開く音がした
『眠れないの?』
ソファの背後からかかった声に
『うん・・・私に構わず寝て』
そう返したのに
『じゃあ、つき合うよ』と
彼は同じようにペットボトルを持って隣に座った
言葉を交わす訳でもなく
ただ二人で座っている時間は
一人で座っているより更に居心地が良い
そんな二人きりに慣れたのか
彼に聞いてみたかったことが口から出ていた
『この結婚って子供の頃から決まっていたって聞いたけど
一翔さんには好きな人は居なかったの?』
“モテるから”と聞かされた日から
ずっと気になっていたんだと思う
『な~に?気になる?』
それに対して彼は、また緩く返してきただけだった
諦め半分、悔しさ半分
『な、らないわ。聞いてみただけ』
動揺がそのまま声を詰まらせた
そんな私をギシッとソファを揺らした彼は
長い腕で抱きしめてきた
『・・・っ』
『君はあの頃から可愛いかったよ
僕の通ってる学校には居ないタイプだった
もちろん君と結婚することを知っていたから
ガールフレンドは沢山いたけど特定の彼女は居なかった』
聞かされた彼の胸の内に
嬉しさで鼻の奥がツンとする
そんな私を一度ギュッと抱きしめた彼は
おでこを隠す前髪を持ち上げると
おでこにチュッとキスを落とした
『・・・っ』
驚いているうちに、その唇は少しずつ場所を変える
目蓋、鼻先、頬へと移り
少し震える私の唇と重なった
強く打つ鼓動は壊れるんじゃないかと心配するほど騒ぎ出し
息を止めたままの私を追い込んでくる
離れようと反らした背中は
彼の大きな手に捕まって
戸惑ううちに
唇を割って
熱い舌が侵入してきた
・・・っ、むり
プチパニックの酸欠の私は
捕食されるような感覚に陥り
苦しさから逃れるように
彼の胸を押して離れると
酸素を欲した荒い呼吸が肩を揺らした
『止めてたの?息』
クッと笑う彼は、そんな私のことなんてお構いなしに
『鼻でゆっくり息をしてて』
容赦なく唇を合わせると
そのままソファに押し倒してきた