お見合い相手は無礼で性悪?




ローヒールのお陰でショッピングセンターを堪能することができた

飲食店が建ち並ぶエリアの案内図を見ながら
話していると


『愛華さん、お腹が空いた頃でしょう
ビュッフェスタイルのお店が話題でオススメですよ』


トレーナーがその中で一番広い店舗を指で差した、瞬間


『おやおや、お嬢様のお買い物は侍従付きですか』


背後から聞こえてきた声に反射的に振り返った


「・・・っ」


鈴木社長の息子さん、いや・・・
あのうざい男が一人で立っていた


『・・・な、に」


・・・違う


そう言い訳しようとしたけれど

側に立つトレーナーを見ると
両手いっぱいに紙袋を下げている

・・・あぁ、確かに

そうは思ったものの
この人に指摘される筋合いもなく


こうなったら開き直ってしまえと


『そうですけど、なにか?』


あなたに関係ないでしょ?と言わんばかりの
小馬鹿にしたような態度を取った


『トレーナー、行きましょう』


踵を返し歩き始めると
カツカツと背後から靴音が迫ってくる


『ここは、僕が・・・』


トレーナーの言葉で立ち止まると
あいつも同じように止まった

さり気なく私の前に盾のように立ったトレーナーは


『鈴木さん、なにかご用でも?』


いつも通りの笑顔で対応する


まだ何かイヤミを言うつもりなのかと
トレーナーの背中に隠れながらチラッと顔を見ると


あいつはハァ、とため息を吐いた後
トレーナーを鋭く睨みつけた


『君は社員だよな?だったら俺のこと聞いてるんじゃないのか?なにかご用?ではなくて、この子は俺が自宅に送り届けることになったから・・君の業務はこれでお終い』


早口でまくし立てるその様子に頭の中に疑念が浮かび上がった


・・・聞いてる?

・・・この人は私の為にここに来た?

・・・自宅に送り届ける?


何一つ繋がる答えがなくて首を傾げていると



『そうでしたか・・出過ぎた真似をしました。では、自分はこれで失礼します
愛華さんのことをよろしくお願いします』


アッサリと引き下がったトレーナーに息を飲む

理不尽な話は間違いなく断ってくれると思っていたから

益々不可解な話に瞬きを早くすることしかできなかった





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