漆恋を解く僕たちは。
「いや…!あの…!すみません!」

俺の拒絶に傷つく彼女。
彼女があまりにも悲しそうで見ているのも辛い。

でもなんで?
なんで会っていきなりキスされそうになってんだ?


そんで拒否られてこんなに傷つくか?


それに なんでこの子は俺の名前を知ってる?


いや待て、そもそもここはどこで俺はなんでここにいる?


一つ疑問に思うと次から次に疑問がどんどん増えていく。


それでもまずは彼女を拒んだことを釈明することが先決だ。


「…すみません。あの、いやだったんじゃないんです。」


そうだ。ものすごくドキドキした。思考が停止するくらいには。


ただ彼女の嬉し涙を見て、あのキスが俺に宛てたものでは無いと感じた。


それを受け取ってはいけない、本当の宛先へ向けてあげないと、そう思った。




「俺、あなたの声で目が覚めて。気が付いたらここに居たんです。


だから…会いに来たって訳ではなくて。…あなたはどうして俺の名前を…?


俺…以前にどこかであなたとあったんでしょうか?」




言葉を選んでゆっくり、ゆっくりと話す。

彼女は顔を上げると俺の顔を見て目を見開いて口をぱくぱくさせている。

表情の忙しい人だ。


「……っっ!!!!!」


「俺の顔、どうかしましたか?」


「…………………。ごめんなさい、人間違いでした…。」




< 2 / 52 >

この作品をシェア

pagetop