漆恋を解く僕たちは。
「正直、風景がいきなり変わったことより絶景に驚いて。

ほんとすごいな…紗夜さんは魔法使いか何かですか?」


夢なんだから何だってありだ。


彼女が『実は私は妖精なんです』と言っても信じられる。

むしろ似合ってるとすら思う。


「違いますよ、私はただのヒトです。ただここに来てから不思議な力が使えるようになって。」


゛ここに来てから゛…??


そういえば食事中もそんなことを言ってたし、彼女にはここに来る前の物語があるのか?


・ ・ ・・ ・ ・

・ ・ ・まぁ、言葉の綾ってやつだろ



推理小説でもあるまいし台詞にいちいち伏線なんてないよな、そもそも俺の夢だし。


「せっかくなので探検に出かけませんか?
まだきれいな場所が沢山あるんですよ。」


話の途中で考え込んでいた俺は彼女の声でふっと我に返った。


彼女の提案でそのまま出かけることになって、立ち上がってふと周りを見渡すと、次から次に出てきたはずの本やぬいぐるみは消えていて食器もクロスもきれいになくなっていた。
< 21 / 52 >

この作品をシェア

pagetop